あの時間は世界でいちばん穏やかな時間だったとおもう

好きだった人と偶然再会した日からもう少しで一年が経つ。どうして覚えているのかって、わたしが、好きだった人を忘れた日なんてあっただろうか。

ずっと追いかけてきた走り姿を、見間違うはずなんてなかった。一目見てすぐにわかった。変わったけれど変わらない、ずっと好きだった後ろ姿だった。

まさかまた、あの場所で、ふたりで話すことができるなんて願っていても思えなかったから、本当に夢だと思った。暗くなるまでずっと話して、帰ろうと決めたあとの長話だって変わらなくて。変わったことは昔よりずっと雰囲気が柔らかく、優しくなっていて、わたしと離れたあとで彼に出会った人たちが作りあげた彼なのだと そう思った。

 

何年経っても、苦しいときや挫けそうな時に呼ぶ名前は変わっていなくて、きっとわたし以上にずっと彼を好きでいる人なんていないのにどうして選んでくれないんだろうって、だけどきっと戻ったところで何も変えられずまた離れることはわかりきっているから。

あのね、そばにいたいとは思わないよ。ただ幸せで生きていてくれたらほんとうにそれでいいの。存在だけでもうわたしは生きていけるから、元気でいてほしい。

ただ、本当にもしも、どうしようもなくなったときは、必ずわたしが味方になるからその時はすぐに呼んでねなんて、未練がましいにも程があるかな。

 

わたしは、幸せです。

恋人との二人暮しもはじまりました。

きっとずっと幸せになるから、幸せでいるから、心の中に名前を置いておくことはどうか許してほしい。